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研究者であること ~イオン交換膜でスタートした45年~ | AITOP
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書籍


研究者であること ~イオン交換膜でスタートした45年~

発刊日 2000年9月15日
ISBN ISBN4-900830-64-X
体裁 B5判 上製 192頁
価格関連備考 本体2,000円+税
発行 (株)エヌ・ティー・エス
問い合わせ (有)アイトップ
TEL:0465-20-5467 E-mail:ktl@r4.dion.ne.jp
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著者 水谷 幸雄  元(株)トクヤマ常務取締役研究開発本部長
趣旨 【本書の特徴】
イオン交換膜関連の研究で数々の実績を築いた著者が綴った、研究者としての半生記とその精神論を、研究レポートとエッセイの2部構成で編集。若きケミストたちへ“真の研究者”たるべき姿、研究ノウハウのすべてを伝える。

序文

  世界的に見ると,日本の化学工業界は大半が中小規模の企業で占められ,それらが競合しているのが現状である。将来,存続していくための再編成は避けられないし,すでにその動きも始まっている。「資本集約型事業の最後の決め手は資本力である」といった原則は,無視できない。
  これに拮抗できるただ一つの方策は,“Specialty Chemicals”志向といえよう。すなわち,「独自の技術,製・商品を持つ」ことである。国内企業も“Specialty Chemicals”の重要性は十分に意識しており,研究開発の管理者層も,「当社では十数パーセントの研究者には好きなことをやらせている」などと言う。一見,開発体制が整っているように見えるが,管理優先の姿勢であることは明らかである。はたして,このようなスタンスで優れた研究成果が得られるかどうかは,疑問視せざるを得ない。
“Specialty Chemicals”とは,「独自の特許,もしくはノウハウに保護された技術,製・商品」と定義できるのではあるまいか。他に先んじて見いだした知見に基づく研究成果は,やがて特許として広く認知される。基本に忠実な取組み方であればあるほど良い特許が得られ,その波及効果も大きい。
  そういった知見を生み出すためには,研究者の発想そのものに期待するしかない。人間の思考は,その風土に大きく影響されるため,いかにして好ましい研究風土を嚢成するかが成功に結び付くカギとなる。
  基本的な新しい知見は,なにも最先端の研究分野だけに潜んでいるわけではない。気がつかないだけで,既存事業の周辺分野など身近なところに埋もれているのではないか。むしろ,その方が結果的に実利に早く結び付くケースが多い。
  では,どうすれば新しく,かつ素性の良い発想を見いだすことができるのであろうか。それには,ひたすら未知の解明に注力するしかない。掘り起こす分野は新規分野でも既存事業の周辺でもよい。大切なのは研究テーマの出所を限定しないこと。そうしなければ,研究風土の醸成はおろか新規な発想が生まれる頻度も高められないであろう。
  一般に企業においては,具体的なニーズ志向の研究が重視されている。それだけに,もし企業存続のために“Specialty Chemicals”を志向するのなら,研究者の発想を促すような,融通性のある弾力的な組織作りと管理体制を整備することが不可欠である。
  私は昭和28年(1953),徳山曹達株式会社(現在,株式会社トクヤマ)に入社以来,平成10年(1998)6月に退社するまで一貫して研究畑を歩いてきた。中でもとくに印象深いのは,最初に与えられたテーマ「選択透過性イオン交換膜の合成」の研究であり,最初の成功体験,かつ初めての“Specialty Chemical”となった「ペースト法イオン交換膜という機能性材料の製造方法」の発明であった。また,昭和30年代初期の石油化学勃興期に,日本企業の多くが競ってモンテカチーニ社を訪問したことも思い出深い。目的はポリプロピレンの技術導入であったが,その高い技術の力を思い知らされた。
  こうした経験から,私は昭和30年代後半以降,研究は“Specialty Chemicals”を志向するべきだと考えるようになり,その後もこの志向を買いた。
  研究という仕事は,人間がするものだけに非常に人間くさい。そこが面白いところでもあり難しいところでもあると,私は常々思ってきた。そしていつのころからか自分の歩いた道を振り返り,研究の人間くさい部分を書いてみたいという心境になった。淡々と,できる限り事実に忠実に振り返ったつもりである。  
 
2000年9月  水谷 幸雄 
 
 

書籍・DVDの内容

第1章  研究と私

第1章 研究のスタート 
1. イオン交換膜研究の始まり  
2. イオン交換膜  
3. 最初のテーマと重縮合型イオン交換膜  
4. 付加重合型イオン交換膜への取組み  
 
第2章 最初の成功体験 
1. ペースト法イオン交換膜の誕生  
2. ペースト法イオン交換膜  
3. 巻取り重合法  
4. 1価イオン選択透過性膜  
5. ふとした疑問  
6. 膜構造の解明  
 
第3章 新たなる挑戦 
1. 新しい研究テーマの探索  
2. ポリプロピレンの改質  
3. 無機イオン交換体の触媒作用  
4. イオン交換膜の改良研究  
5. 微多孔シート  
6. 他の研究テーマ  
 
第4章 研究リーダーの視点 
1. 藤沢研究所  
2. 研究開発本部長時代  
3. 微多孔ホローファイバー  
4. 事業計画の難しさ  
 
第5章 終わりなき研究 
1. 一研究者に戻って  
2. 微多孔繊維  
3. 相分離架橋重合  
4. マロンニトリルの酸化重合  
5. 研究テーマの相関性  
 

第2章 研究ということ
第1章 良い研究を目指すためには 
1. まず研究の本質を考えよう  
2. 言葉の定義  
3. 研究ということ  
4. 発想に基づくプラスアルファ  
5. 日本と欧米の思考風土の違い  
6. 研究風土もさまざま  
7. 化学常識  
8. 既知の領域と未知の領域  
 
第2章 研究のための視点と思考
1. ものの観方  
2. 富士山の実体とは  
3. 花は紅、柳は緑  
4. 想像性と創造性  
5. 発想の尊重  
6. 源流にあるもの  
7. 最初の一石  
8. 布石を正しく見極めるには  
9. 初歩の段階  
10. 独自の研究と孤独  
11. 孤独である勇気  
12. 考える姿勢  
13. 視点の違いが明暗を分ける  
 
第3章 自分が本当にやりたいことを知る 
1. 信じる道への賭け  
2. 岐れ道で迷ったら  
3. メモの効力  
4. 人に向かって研究をしない  
5. 研究に求められる適性  
6. 研究の自由  
7. 自分のストーリーを書く  
8. 失敗を恐れない  
9. 目標の設定  
10. 文献の読み方  
11. 学んで忘れる  
12. 情報の洪水に流されないために  
13. 研究のプロ  
 
第4章 発想を具体化するためには 
1. 予備実験の勧め  
2. 実験への観察眼  
3. 実験技能  
4. 研究と実験  
5. 実験との対話  
6. 研究→実験→仕事  
7. 成功体験が成長を左右する  
8. 研究開発の進め方  
9. テーマの素性  
10. 良いテーマを求める  
11. テーマの方向性と継続性  
12. テーマの存続と棚上げ  
13. 真のグループリーダーとは  
14. 研究グループの意義  
 
第5章 研究の成果が出るまで 
1. 研究の評価  
2. 有効に討論するための工夫  
3. 学会を上手に利用する  
4. 自分の研究を見る目  
5. 廻り合せという流れの中で 
6. 研究の効果と効率  
7. ニーズ志向とシーズ志向  
8. 研究と人間性  
9. 研究者の見識  
10. 研究者の責任