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水素吸蔵合金による水素同位体の分離技術 | AITOP
  • 申込要領

書籍


水素吸蔵合金による水素同位体の分離技術

発刊日 2000年4月28日
ISBN ISBN4-900830-55-0
体裁 A5判 上製 342頁
価格関連備考 本体6,000円+税
発行 (株)エヌ・ティー・エス
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TEL:0465-20-5467 E-mail:ktl@r4.dion.ne.jp
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著者 深田 智  九州大学大学院工学研究科エネルギー量子工学部門助教授
趣旨 【本書の特徴】
天然水素中の重水素、トリチウムを水素吸蔵合金の吸蔵作用と同位体効果を利用して高濃度で分離する技術を、基礎から応用分野まで解説。  

まえがき

 21世紀は、環境の時代である。エネルギー問題、地球温暖化、環境汚染を解決するための一つの解決策として、「水素」への期待が非常に高まっている。つまり、「水素」はエネルギーの移送、あるいは発生媒体としての利用が考えられる。例えば、日本で実用化されたニッケル水素化物電池をはじめとして、燃料電池の利用が格段に広がるとともに、今後近い内に水素燃焼タービン、水素自動車、ヒートポンプ等が実用化されるであろう。水素吸蔵合金は水素貯蔵に用いられる可能性が高いが、そればかりではなく、吸蔵する際の水素と重水素あるいは三重水素(トリチウム)間の同位体差を利用して同位体分離に利用することができる。また、濃縮した重水素やトリチウムは、各種トレーサー実験だけでなく、次世代エネルギー源となるべき核融合炉のための燃料に用いられる。なお、核融合炉プラズマ研究に関しては、現在日本、米国、欧州、ロシアの4極を中心に国際共同研究が行われており、幾多の成果が挙げられている。 
  天然水素中には約150ppmの燃料の重水素が含まれているが、水素吸蔵合金の吸蔵作用と同位体効果を利用して、小規模かつ迅速に、常温・常圧に近い状態でしかも高い濃度で分離するのが理想である。しかし、過去に工業的成功例がない。それは、水素同位体が同じ水素としての化学的性質を有し、同位体間の吸蔵能力の差がそれほど大きくないことによる。このため、従来の装置設備ではかなり規模が大きくならざるを得ない。 
  これを小型化するためには、同位体混合をできるだけ回避する方法を実証し、かつ装置内の水素同位体濃度変化をできるだけ正確に把握し、濃縮を効率化することが必要である。本書では、その具体的な方法を紹介することにとどまらず、関連する研究をできるだけ広く集め系統的にまとめることに主眼を置いた。これによって、基礎から先端的応用分野まで、できるだけ広くかつ平易にまとめたものとして、社会人技術者、研究者、大学院学生のみならず、知識欲の高い学部学生にも広く利用していただけるのではないかと考えている。 
  全体は6章から成り立つが、第2章では分離の基礎として金属―水素間の平衡関係、第3章では水素吸蔵と拡散の同位体効果と同位体分離係数、第4章では同位体交換プロセスについて、最新の成果を含めできるだけ詳しく説明した。応用研究として、第5章と第6章の解析と試験結果を詳しく説明した。 
  したがって、本書は最初から読み進めていただかなくても、必要個所を読めば理解し今後の研究や技術的開発に役立てていただけるものと思われる。また参考文献もできるだけ原著論文から数多く引用し正確を期すことに心がけた。 
  本書をまとめるきっかけとなったのは、著者が試作研究を実施している「金属粒子を充填した間欠向流型水素同位体分離装置」を通じてである。関連する周辺研究がかなりの点数に上るにもかかわらず、基本的な成果をまとめた専門書が和、洋書を問わずほとんど見当たらなかったからである。 
  本書の一部は著者とその当時の大学院学生との共同でおこなった実験と解析結果を整理したものであるが、さらに関連する研究を大幅に加え系統的にまとめて実現に至った。材料科学、物理化学、化学工学、原子力工学などの最小限の基礎知識があれば、十分に役立てていただけるものと確信している。  
 
2000年4月  深田 智  

 
 

書籍・DVDの内容

第1章  金属水素化物充填層の利用研究  
1. 金属粒子充層研究の背景  
2. 核融合炉における水素同位体分離のための金属粒子充填層利用  
2.1. 核融合反応  
2.2. 燃料ガス循環システム  
2.3. ブランケットからのトリチウム回収システム  
2.4. 水素同位体貯蔵工程  
2.5. 金属粒子充層の過去の研究の概要  
3. 水素同位体分離濃縮の研究  
4. 水素エネルギー工学における金属粒子充填層利用  
4.1. 水素の貯蔵と輸送  
4.2. ヒートポンプ  
4.3. 原子力分野におけるヒートポンプ利用  
4.4. 水素の精製  
5. この本の構成  
6. 参考―国際熱核融合実験炉(International Thermonuclear Experimental Reactor;ITER)のプラズマ排気ガス処理システムとトリチウム除去システム  
 
  

第2章 金属-水素間の平衡関係
1. 水素化合物の種類  
2. 金属―水素系状態図  
3. 単元素金属―水素の平衡関係  
3.1. Sieverts則  
3.2. van't Hoff式  
3.3. 共晶反応  
3.4. Pd-H系の平衡等温線  
3.5. 臨界点付近におけるPd-H系の平衡線  
3.6. 3成分系(金属+添加元素?水素)のSieverts定数と部分モル量の変化  
3.7. 禁止サイトのある場合の配置エントロピー(V-H系)  
3.8. クラスターリングするときの配置エントロピー  
3.9. 高圧系の圧力組成等温線  
3.10. アモルファス合金への水素吸蔵  
3.11. 二つ以上の水素化物がある金属―水素系(Zr-Hの場合)の平衡線  
4. 金属間化合物―水素系平衡線の経験式  
5. 余剰自由エネルギー,余剰エンタルピー,余剰エントロピー  
5.1. 余剰自由エネルギーの定義  
5.2. ヒステレシスが存在する場合の平衡等温線(ZrCo-H系の場合)  
5.3. Ti-HシステムのPCT曲線  
5.4. Zr-H系のPCT曲線  
5.5. ZrFe-H系のPCT曲線  
6. 平衡線へのサイズ効果  
7. 合金水素化物のエンタルピーの評価  
7.1. 逆安定性の法則(rule of reversed stability)  
7.2. 合金の生成エンタルピーの評価  
7.3. ラーベス相合金の置換効果  
8. 参考―水素の状態方程式  
 

  
第3章 水素吸蔵と拡散の同位体効果と同位体分離係数

1. 吸蔵の同位体効果  
1.1. セルフトラップ状態  
1.2. 等方的調和振動子モデル  
1.3. 非調和振動の影響  
1.4. fcc,bcc,hcp金属中の水素吸蔵の同位体効果  
1.5. 合金の同位体効果と中性子非弾性散乱 の測定結果  
2. 拡散の同位体効果  
2.1. 拡散機構  
2.2. トンネル拡散過程の同位体効果  
2.3. 熱活性化過程の同位体効果  
2.4. 拡散係数の同位体効果の測定値  
3. 拡散係数の濃度依存性と同位体混合拡散  
3.1. 拡散係数の濃度依存性  
3.2. 同位体混合拡散  
4. 同位体交換反応  
4.1. 同位体交換反応の平衡定数  
4.2. 活性錯合体理論による動的同位体効果の評価  
5. 多成分水素同位体の平衡関係  
5.1. 活量係数を用いた計算式  
5.2. 理想溶液モデル 
5.3. Hickmanのモデル  
6. 同位体分離係数  
6.1. パラジウム,Pd  
6.2. バナジウム,V  
6.3. ウラン,U  
6.4. チタン合金  
6.5. LaNi系合金  
6.6. 材料選択と同位体分離に必要な性質  
7. 固体内の水素拡散係数,D5  
 

  
第4章 同位体交換プロセス

1. 金属水素化物上の同位体交換プロセスの概要 
2. 同位体分離係数と同位体交換反応速度定数 
2.1. 同位体分離係数 
2.2. 同位体交換反応速度定数 
3. 重水素濃度が高いときの解析 
3.1. 質量収支式と境界条件,初期条件 
3.2. 数値計算 
4. 低重水素濃度での解析 
4.1. 質量収支式と境界条件,初期条件 
4.2. ラプラス変換 
4.3. 高速フーリエ変換の利用 
4.4. 総括物質容量係数の定義 
4.5. 計算結果 
4.6. モーメント法 
4.7. 総括物質移動容量係数を用いた場合のモーメント 
4.8. パラメータの決定 
4.9. 段モデル(plate model)とHETP(height equivalant to a theoretical plate) 
5. 実験 
5.1. 実験装置 
5.2. 試料 
5.3. 実験方法 
6. 同位体分離係数と同位体交換速度定数 
6.1. 同位体分離係数の温度依存性と圧力依存性 
6.2. 物質移動係数の温度依存性と圧力依存性 
6.3. HETP(height equivalent to a theoretical plate) 
7. 参考―式(104)の導出 
 

  
第5章 置換、溶離、先端クロマトグラフィーによる水素同位体分離 

1. 多成分分離係数の一般的性質  
2. 多成分充填層物質収支式と物質移動速度式  
3. 局所平衡モデル  
3.1. 伝搬速度  
3.2. コヒーレンス条件  
3.3. 組成経路(composition path)  
3.4. 2成分系への適用  
3.5. H,D,T3成分系,一定分離係数,一定吸蔵量の場合の組成経路  
3.6. 不活性ガスが主成分で,すべての水素同位体濃度が薄い4成分系の組成経路  
3.7. 軸方向混合拡散の影響  
4. 置換クロマトグラフィーの解析  
4.1. 水素同位体の2成分置換クロマトグラフィーの平衡理論解析  
4.2. 水素同位体3成分の置換クロマトグラフィー  
4.3. 置換クロマトグラフィーの物質移動モデル解析  
4.4. 段モデル  
5. 溶離クロマトグラフィーの解析  
5.1. 平衡理論解析  
5.2. 線形解析  
5.3. 物質移動モデル解析  
6. 先端クロマトグラフィー  
6.1. 2成分水素同位体と不活性ガス混合物の分離の平衡理論解析  
6.2. 先端クロマトグラフィーの段モデル解析  
6.3. 定形濃度分布が成立するときの物質移動抵抗モデル  
6.4. 物質移動抵抗モデルによる多成分水素同位体の吸蔵と脱離速度の解析  
7. 参考―h変換  
 

  
第6章 同位体分離装置の解析・設計

1. 分離操作の分類  
2. 直列段分離装置  
2.1. 段カット  
2.2. 単純カスケード  
2.3. 再循環カスケード  
2.4. 非混合カスケード  
3. クロマトグラフィック分離装置  
3.1. 置換クロマトグラフィー  
3.2. 溶離クロマトグラフィーの回収効率  
3.3. 同心回転円筒連続クロマトグラフィー(continuous rotating annular chromatography)  
4. 圧力スイング(PSA)と温度スイング(TSA)  
4.1. 分離操作の概略  
4.2. PSAとTSAの局所平衡モデルによる解析  
4.3. PSAとTSAの実験結果  
5. 向流移動層,擬似移動層(counter-current moving bed,simulated moving bed)  
5.1. 粒子落下型移動層の概略  
5.2. 擬似移動層  
5.3. 物質移動解析  
5.4. 移動単位数(NTU)  
6. 周期的対向流充填層  
6.1. TCAPの運転手順  
6.2. TCAPの物質移動解析  
6.3. 二塔式周期的対向流充填層(twin-bed periodically counter-current flow) 
6.4. 二塔式PCCFの解析  
6.5. PCCFの定常状態近似による明示解