発刊日 | 2010年4月 |
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定価 | 本体38,000円+税 |
頁数 | 416頁 |
造本 | B5 |
ISBN | ISBN978-4-86043-267-6 |
発行 | (株)エヌ・ティー・エス |
問い合わせ |
(有)アイトップ TEL:0465-20-5467 E-mail:ktl@r4.dion.ne.jp フォームでのお問い合わせはこちら |
監修 |
【監訳】 岩村 秀 日本大学教授 【翻訳】 廣瀬 千秋 東京工業大学名誉教授 |
編集委員 |
【翻訳】 廣瀬 千秋 Chiaki Hirose 東京工業大学名誉教授、理学博士 1940年生まれ。1966年東京大学大学院化学系研究科化学専攻博士課程中退。東京工業大学資源化学研究所助手、同助教授、同教授を経て2001年3月をもって定年退官。現役時代の専門は物理化学(構造化学、気体分子のマイクロ波分光、分子分光学、レーザー分光、表面和周波発生分光)。 【監訳】 岩村 秀 Hiizu Iwamura 日本大学大学院総合科学研究科教授、理学博士 1934年生まれ。1962年東京大学大学院化学系研究科化学専門課程博士課程修了。1977年分子科学研究所教授、1987年東京大学理学部化学科(1994年東京大学大学院理学系研究科化学専攻に改組)教授。1995年九州大学有機化学基礎研究センター長、1998年学位授与機構教授。退官後も、日本化学会会長、放送大学教授、同東京文京学習センター所長、などを歴任し退職。専門は有機化学。日本化学会進歩賞(1963年)、日本化学会賞(1992年)、紫綬褒章(1996年)、藤原賞(1998年)、日本学士院賞(2003年)を受賞。 |
趣旨 |
【本書の特徴】 キラリティーの問題をナノスケール(原子・分子レベル)の次元で観測し、そこから発現する機能について論述する。 ■原書 「Chirality at the Nanoscale: Nanoparticles, Surfaces, Materials and more」 edited by David B. Amabilino,wiley (2009). |
発刊にあたって
2001年のノーベル化学賞が野依良治らの不斉分子触媒の研究に、2009年のノーベル物理学賞が益川敏英、小林誠のCP対称性の破れの研究に授与されたことは記憶に新しい。一方で19世紀L. パスツールの時代から、水晶や酒石酸塩の結晶が施光性を示すことがよく知られている。したがって、原子核、分子といったサブナノの世界で、またマクロの世界での物質のキラリティーとその科学における重要性を認識しない科学者はいない。しかしその中間のナノの世界(10-9~10-6mの領域)でもキラリティーが重要な役割を演じていることは、必ずしも十分に認識されていないのではないだろうか。 今日の科学技術では、デバイスやマシンのサイズをマイクロメートルからナノメートルの領域に持ち込むことによって、高密度・小型化、高速化や省エネルギーを可能とすること、さらにはこのサイズの原子・分子に特徴的な量子サイズ効果を発現させ、概念的にも革新的なデバイスやマシンを生み出すことが期待されている。先に監訳を担当し同じ(株)エヌ・ティー・エスから上梓した、V. Balzaniらの『分子デバイスおよび分子マシン~ナノワールドへの誘い~』およびG. Schmidらの『ナノ粒子科学―基礎原理から応用まで―』は、主としてサブナノの原子分子を集積させていく「ボトム・アップ」の方式を扱った総合的な名著である。この方式で原子・分子がナノ粒子、単分子膜、ゲル、オリゴマー、ポリマー、液晶、結晶などの形でゼロ次元~3次元へと成長する際に、キラリティーが移転・増幅されていく。本書は、この過程をどのように観察研究し、物理現象を実用に耐える分子デバイスやマシンへと展開していくかを適切に提示している。生命の起源と関係して、天然のタンパク質を構成するアミノ酸及びDNA、RNAを構成する糖のホモキラリティーがもう1つの重要な課題であり、今日でもアスパラギンの研究で新しい発見が行われている。 原書著者前書きにもあるように、本書は欧州委員会(EC)が科学の学際領域の振興を図って、若手研究者のために主催する中長期の国際共同研究・研修プログラムMarie Curie Research Training Networkが母体となり、その打ち上げとして、2007年9月にスペインで開催された国際会議“ナノスケールでのキラリティー”の講演を基礎としている。第1章にはキラリティーの概念、歴史や全体像をまとめてあり、オムニバスの欠点を補っている。この種の学際領域のシンポジウムでは、既存の学問領域の1つ、たとえば有機化学が中心となりそこへ他の分野、たとえば物性物理の専門家を一人招くというようなことが多いが、本書ではバランスよく多くの専門性がカバーされている。 今回も物理化学・分光学の専門家である廣瀬千秋博士と有機化学を背景に持つ岩村とが相補的に作業を進め、新語の訳などで意見交換を尽くした。この間(株)エヌ・ティー・エス編集部が調整連絡に励んだ。その中でもchiralityについては、我が国の物理学者の間では“カイラリティー”の訳語がよく使われるが、本書では、『岩波理化学辞典第5版』、日本化学会編『標準化学用語辞典第2版』、『広辞苑第6版』、Wikipedia(フリー百科事典日本語版)に従い、“キラリティー”を用いたことをことわっておきたい。 (「監訳者のことば」より 2010年2月 岩村 秀)
書籍・DVDの内容
序章 ナノスケールでのキラリティー概論 1 光学活性とキラリティーの歴史 2 キラリティーと生命活動 3 対称性とキラリティー 4 絶対エナンチオマー選択 5 ナノシステムのキラリティーを調べる分光プローブ 6 結び 光学活性超分子 1 超分子の立体化学序論 2 内在的キラリティーを持つ分子カプセル型自己組織化体 3 超分子系の形成におけるキラリティー誘起 4 キラリティー認識のためのキラル空間 5 結びと展望 キラルナノ粒子 1 序論 2 ナノ粒子の性質と合成 3 無機ナノ粒子が持つキラル光学的性質 4 光学活性を持つ配位クラスター 5 キラルな有機化合物のナノ粒子 6 応用 7 展望 機能性キラルナノファイバーのための媒質になるゲル 1 ゲルの概要 2 キラルな有機ゲル 3 キラルなヒドロゲル ポリマーにおけるキラリティーの発現 1 キラルポリマーの歴史 2 ポリマー合成におけるキラルアーキテクチャの制御 3 キラリティーを持たないポリマーへの不斉誘起 4 キラリティー記憶効果:ヘリシティの同調 5 キラルブロックコポリマーとナノスケール相分離 6 キラルな目的物を得るためのテンプレート 7 展望 超高真空条件下の金属表面における分子レベルキラリティーおよび超分子レベルキラリティーの ナノスケール探索 1 序論 2 1D 超構造体における表面キラリティーの生成 3 2D 表面キラリティーの生成 4 単一分子レベルでマッピングされたキラリティーの認識 5 要約 物理吸着単分子膜のトンネル顕微鏡観察で観測されたキラリティー発現 1 序論 2 液固界面に生じるキラリティーの識別方法 3 エナンチオ純粋分子で構成された単層膜のキラリティー 4 多形 5 キラリティーは常に発現するのか? 6 ラセミ混合物:自然分晶は生じるのか? 7 多成分型構造体 8 物理場 9 展望 空気/水界面で両親媒性分子が作るキラルアーキテクチャの構造と機能 1 水表面のキラル単分子膜概論 2 両親媒性化合物のエナンチオ純粋体およびラセミ体が空気/水界面に形成する結晶性 2 次元自己組織化体;ラセミ体から2Dエナンチオ層への自発的光学分割 3 両親媒性α-アミノ酸のラングミュア単層膜 4 水面で生じて確率論的 2 次元不斉転換 5 空気/水界面でのジアステレオマー膜の自己集積 6 水性環境に存在する分子と極性ヘッド部分の相互作用 7 水表面での嵌合二層膜または多層膜 8 2D単層膜から 3D結晶への構造変換 9 空気/水界面で両親媒ラセミモノマーから得られるホモキラルペプチド 10 結び 液晶中でのナノスケール立体化学 1 液晶状態とは 2 確定した分子キラリティーに立脚して液晶中に生じるキラリティー 3 アキラル分子の分子自己集積で生じるキラリティー 4 アキラルな湾曲コアを持つ分子によって形成される液晶相の極性秩序とキラリティー 5 他の液晶相で自発的に生じる反射対称の崩壊 6 キラルなテンプレートの働きを持つ液晶 7 展望 結晶成長とキラリティーのナノスケール特性:構造平衡と不均質平衡 1 キラル系のための結晶対称性および結晶成長序論。 序説とナノサイエンス 2 結晶中での超分子相互作用 3 結晶形成時の対称性崩壊 4 有機化合物の光学分割 5 キラル対イオンとの配位化合物の光学分割 6 キラル結晶の形成における熱力学の考察 7 エナンチオマーの結晶化に対する影響因子 8 キラルなホスト-ゲスト錯体 9 展望 ナノスケールでのスイッチング:キラル光学を使った分子スイッチと分子モーター 1 序論 2 分子状態のスイッチング 3 アゾベンゼンをベースにしたキラル光学スイッチング 4 ジアリールエテンをベースにしたキラル光学スイッチ 5 電気キラル光学スイッチング 6 円偏光を使った分子スイッチング 7 ジアステレオマーによるフォトクロミックスイッチ 8 蛍光のキラル光学スイッチング 9 超分子の組織および会合のスイッチング 10 分子モーター 11 キラルな分子マシン 12 ナノスケールマシンを駆動する 13 チャレンジと展望 キラルナノポーラス材料 1 キラルなナノポーラス材料の分類 2 多孔質でキラルな金属-有機フレームワーク 3 ポーラス酸化物材料 4 ポーラスシリカ材料のキラル固定化 5 展望